全曲集 道導

金田たつえ 全曲集 道導歌詞
1.道導(みちしるべ)

作詞:高橋直人
作曲:萩仁美

歩む道さえ 決めかねて
迷い悩んだ 若い日よ
あてもないまま 旅立って
時の早瀬を 流れたわ
恋をして縁結び 産まれてきた子を育て
親の有難さ知りました
凪の海のように 穏やかに生きて
大きな愛で 包んでくれた
心広き父 優しい母よ
二人は 人生の道導(みちしるべ)

過去は戻って こないから
光り輝き 見えるのね
日々の生活(くらし)に 疲れたら
遠い故郷 思い出す
悲しみは喜びの 苦しみは幸せの
きっと前兆(まえぶれ)と信じてる
茜雲のように 情熱の色で
明日の夢が 染まっていたわ
心熱き父 明朗(あかる)い母よ
二人は 人生の道導

音沙汰がないけれど 元気かと気にかける
親の心配に涙する
湧いた水のように 慈しみ湛え
私に愛を 注いでくれた
心清き父 鑑(かがみ)の母よ
二人は 人生の道導


2.ソーラン挽歌

作詞:石本美由起
作曲:西條キロク

景気に湧いたあの頃は 夜は篝火燃えていた
母は番屋で飯を炊き 父は鰊の群れを追う
ヤン衆相手に日本海 今じゃ寂れた漁師町
ヤンレ 海猫鳴くばかり

兄妹そろい声あげて 焼いた大漁の祝い餅
母が自慢の手料理に 父は手拍子うなり節
酒を相手に夜を明かす 遠い夢だね船着場
ヤンレ 昔の物語り

瞼に浮かぶ想い出は 人の心の宝物
父母も今では歳を取り 兄や私や妹も
浜の仕事にゃ縁がない 涙曇りの日本海
ヤンレ ソーラン 夢挽歌
ヤーレン ソーラン ソーラン
ソーラン ソーラン 夢挽歌


3.望郷江差~演歌・江差追分~

作詞:民謡江差追分より
作曲:萩仁美

松前江差の 津花の浜で ヤンサノエー
好いた同志の 泣き別れ
連れて行く気は やまやまなれどネ
女通さぬ 場所がある

泣いたとて どうせ行く人 やらねばならぬ
せめて波風 おだやかに
泣くに泣かれず 飛んでも行けずネ
心墨絵の 浜千鳥


4.夜の蝉

作詞:萩原たかし
作曲:花笠薫

あられなく胸をふるわせ 夜鳴く蝉は
誰に焦がれて 泣くのでしょうか
好きで別れた あなたに逢えた
この橋を渡れたら
棄てて悔いない ああ迷い川

好きだよと 拒むすべなく さしだす傘に
耳を染めても 不埒でしょうか
まわり舞台の 道行きならば
赦される 恋路でも
他人は指さす ああ罪の川

狂おしく 命しぼって 夜鳴く蝉は
何処で未練を 消すのでしょうか
息を殺して くるめく闇に
うたかたの 肌を焦がす
生きる縁の ああ幻想の川


5.湯の町椿

作詞:仁井谷俊也
作曲:南郷孝

かくれ咲きした 椿の花に
どこか似たよな 身のさだめ
いくら好きでも この世では
一緒になれない ひとだもの
炎えて悲しい… 湯の町椿

宿の浴衣に 羞じらいながら
酔ってあなたに 躰をまかす
離れられない ふたりなら
このまま愛しい 胸の中
いっそ散りたい… 湯の町椿

帰り支度の 貴方の背中に
次の逢瀬を またせがむ
悪いおんなと 云われても
誰にも渡せぬ 恋だもの
夢に生きたい… 湯の町椿


6.母恋巡礼

作詞:木下龍太郎
作曲:保田幸司郎

あれもこれもと 想っていても
夢で終った 親孝行
離れ離れにめ 暮らしただけに
胸に残るは 悔いばかり
母恋巡礼
札所めぐりの 花供養

やると決めたら 死ぬ気でおやり
やって駄目なら 戻りゃいい
故郷を出る朝 しばれる駅の
別れ言葉の あたたかさ
母恋巡礼
添える想い出 花供養

いまは小言も 聴けないけれど
いつも心の いのち杖
辛い時には 昔に戻り
泣いて甘える 夢枕
母恋巡礼
鈴を鳴らして 花供養


7.おまえさん

作詞:吉田旺
作曲:松原謙

紺の暖簾に 染めぬいた
゛夫婦゛二文字が 目に沁みる
やっとだせたね ふたりのお店
好きなお酒も 好きなお酒も 我慢した
甲斐があったね おまえさん
ネエ おまえさん

両親の許しも ないままに
乗った夜汽車が 振り出しで
貧乏 貧乏の 駆落ち生活
それもいまでは それもいまでは なつかしい
夢のようだね おまえさん
ネエ おまえさん

派手な花輪は ないけれど
むかし仲間の 顔と顔
今日の開店を 飾ってくれる
唄もうれしい 唄もうれしい 祝い節
泣けてきちゃった おまえさん
ネエ おまえさん


8.くちなし情話

作詞:吉田旺
作曲:鈴木淳

好きで我が子を 死なせる母が
どこにいましょう いるならば
それは鬼です 母親じゃない
白いくちなし 匂う夜は
なぜかあの子が この乳房
探し求めて いる気がします

それであなたの 気が済むならと
ひどい仕打ちも 裏切りも
耐えてきました やつれた胸で
そんな私を 置き去りに
逝ったあなたを 恨みます
ましてくちなし 零れる宵は

可愛我が子を 亡くした母に
乱れ縁の 置き土産
抱けば泣けます 幼いこの子
白いくちなし 目で追って
こぼす笑顔に 罪はない
生きて行きます この子とともに


9.人妻

作詞:一ツ橋雪
作曲:保田幸司郎

しあわせあげると言われた人に
すがれぬ運命の それは人妻
愛することも答えることも
眠むることも 目覚めることも許されぬ
あゝ私は悪い女です
すべてをすてて 行けない女です

夢か誠か しのび逢う夜は
あやしく燃える それは人妻
尽くすことも 堪えることも
励ますことも 支えることも 届かない
あゝ私は罪な女です
あなたのために死ねない女です

死ぬも生きるもあなたのままと
心は捧げた それは人妻
寄りそうことも 見つめることも
甘えることも 安らぐことも かりそめか
あゝ私はずるい女です
おぼれて泣いても 所詮は人の妻


10.女の暦

作詞:一ツ橋雪
作曲:池田八声

愛することに 疲れても
それでも二人は 夫婦です
色恋沙汰に 泣かされたって
あなたと私の いとし児のため
耐えて 咲いてる 冬桜
寒の入りです あゝ 女の暦

形式ばかりの 夫婦にも
遊び心も 嘘さえも
悲しいものね 仕草で解る
そうね一度は 命も賭けた
夢にひとひら 残り雪
春まだ遠い あゝ 女の暦

褪せた夫婦の 暮らしでも
あなたに絡む 子供等の
声ききながら 夕飼の支度
こだわり捨てよか 添いとげましょうか
心揺れます 紫陽花に
梅雨の晴れ間の あゝ 女の暦


11.しのび恋

作詞:三浦康照
作曲:石中仁人

一つの傘を 二人で持って
人目をさける 雨の町
今夜はあなたを 帰さない
わがまま云って 甘えたら
きっとあなたは 困るでしょうね
炎えて悲しい あゝしのび恋

あなたの愛を ただひとすじに
たよって生きる 私です
いけないことと 知りながら
別れてくれと 云うまでは
たとえ地獄へ 落ちてもいいの
ついてゆきます あゝどこまでも

あなたの妻に なる日は夢ね
夢でもいいの 信じたい
夜明けの部屋に 残されて
涙を拭いて いたことを
きっとあなたは 知らないでしょう
辛さこらえる あゝしのび恋


12.黒髪ざんげ

作詞:木下龍太郎
作曲:保田幸司朗

罪を背負って この世の中に
女は生まれて 来るのでしょうか
心ならずも 背いた男の
怨み声やら 笹の風
嵯峨野 隠れ家
ああ 黒髪ざんげ

いつか馴染んだ 花街川に
流した浮名は いくつでしょうか
どれも真実を 捧げたものを
野暮な世間が嘘にする
嵯峨野 迷い路
ああ 黒髪ざんげ

生きる限りは 男に罪を
重ねて行くのが
運命でしょうか
髪を束ねて 剃刀当てて
切れぬ迷いの 糸を切る
嵯峨野 白露
ああ 黒髪ざんげ


13.あかね雲

作詞:一ツ橋雪
作曲:保田幸司郎

出稼ぎばかりの 明け暮れに
泣いてたお前はヨー もうはや二十才
明日は文金花嫁御寮
見せてやりたや 見せてやりたや恋女房
うすい縁のヨー あかね雲

手塩にかけた 娘なら
幸せになれヨー 涙がほろり
女房ゆずりの 器量よし
空を仰いだ 空を仰いだ横顔に
幼いままのヨー 泣きぼくろ

たまにはおやじの ひげ面が
恋しくなったらヨー 一緒に帰れ
愛し殿御と ヤヤ連れて
抱いてやろうぞ 抱いてやろうぞふところに
明日は晴れるかヨー あかね雲


14.風の追分みなと町

作詞:仁井谷俊也
作曲:蘭一二三

風の江差に 来てみれば
はぐれ 鴎が 波に舞う
あなたお願い帰ってきてよ
日暮れの海に名を呼べば
老いたヤン衆の 老いたヤン衆の 追分が
おんな泣かせる 港町(みなとまち)

あなた偲べば 鴎の島にヤンサノ-エ-
沈む夕陽も なみだ色

浜に埋もれた 捨て小舟
どこか私に 似た運命
ほろり落とした涙のなかに
やさしい笑顔浮かぶ夜は
海の匂いの 海の匂いのする 酒場で
吐息まじりの こぼれ酒

窓の向こうの 漁火は
女ごころの 命火よ
いつか逢えるわ あなたに逢える
浴衣につつむ 湯あがりの
燃える素肌が 燃える素肌が あの夜を
思いださせる 港宿(みなとやど)


15.花街の母

作詞:もず唱平
作曲:三山敏

他人にきかれりゃ お前のことを
年のはなれた妹と 作り笑顔で 答える私
こんな苦労に ケリつけて たとえひと間の部屋でよい
母と娘の 暮しが欲しい

いくらなじんだ水でも 年頃の娘のいる
左褄(ひだりづま)
住みにくうございます
浮名を流した昔もありましたが…
ああ あのひと
私を残して死んだ あの人を恨みます

厚い化粧に 憂いをかくし
酒で涙をごまかして 三味にせかれて つとめる座敷
あれが子持ちの芸者だと バカにされても夢がある
それはお前の 花嫁姿

女の盛りはアッという間です 若い妓の時代
もう私はうば桜 出る幕ないわ
でも もう少し この花街に 私を置いて下さい
せめてあの娘に いい花聟が 見つかりますまで

何度死のうと 思ったことか
だけど背で泣く 乳呑児の 声に責められ十年過ぎた
宵に褄とる女にも きっといつかは幸福が来ると
今日まで 信じて生きた


16.無法松の一生(度胸千両入り)